写真と絵画、この2つはかなり違うものとして認識されていたりします。
写真は今見えている光景の忠実な写し、絵画は個人的な表現といった具合です。
もちろん、写真や絵画には色々な表現があり考え方も色々でしょう。
ただ、それでも写真と絵画の共通点が意識されることはやはり少なく思えます。
では本当に共通点が無いのかというと、そうでもないのです。
例えば水墨画の空間表現では、背景を淡く描くぼかしが使われたりします。
一方の写真でも、焦点の合った所から像が崩れていくことで同じ様に表現されるのです。
また、この像が崩れている部分のことを「ボケ」と言い、英語圏にもそのまま進出したので「Bokeh」と呼ばれます。
こうした写真で使われるボケは表現として肯定的な意味合いを持ち、ボケ方の良さを表す時には「ボケ味が良い」などと言ったりするのです。
対して英語では元々「out of focus」などと呼び、どちらかと言えば否定的な意味合いが感じられる言葉でした。
あえて日本語に訳すなら、ピントが合っていない部分といった具合になります。
つまり、この「ボケ」を重視する文化は海外では珍しく日本独特だったと考えられるのです。
そして、その原点は水墨画だと言えればいいのですがそれは分かりません。
しかしながら、これら2つにはものの表現の仕方として似たものを感じます。
なので、日本文化ではこうした表現が伝統的に好まれてきたとは言えるかもしれません。
この様に2つの間には表現技法に共通性があるのですが、楽しみ方でも見出せるのです。
例えば浮世絵の名所絵やインスタなどのSNSには、旅行という共通性があったりします。
まず、江戸時代後期になり政情が安定し街道が整備されるなどの条件が整ったため、庶民の間でも旅行が流行し始めました。
ただ、今ほど簡単に行ける訳でもなく行けたとしても一生に一度くらいだったと考えられます。
そのため、行った気分になれる名所絵が求められ発展していくこととなるのです。
有名な東海道五十三次や富嶽三十六景なども、そうした背景から生まれたと考えられます。
あるいは、それを基に思い出を振り返ったり、旅行の計画を立てていたりしたかもしれません。
やはり、こうした楽しみ方には今と変わらないものを感じます。
さて、ここまで見てきた通り写真と絵画には意外と共通性を見出せることがあるのです。
具体的な形あるものに仕上げる方法は時代によって変われども、その根底を成す文化や物の見方はある程度連続している為でしょう。
こうした変遷をみると、目の前にあるものの広がりをより感じられるので実に興味深いです。