湖国探遊記

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安土城考古博物館がリニューアルの予定らしいけど考古部門はどうなるの?日の目を見なくなることの怖さ

安土城考古博物館にて、どうやらリニューアルをする計画が進められている様です。

実際は去年の頭には話がまとめられていたのですが、最近になりようやく知ったのでこんな時期に書くことになりました。

 

ただ、これほど遅くなっても書きたくなる様な内容だったのです。

もちろん全くダメな訳ではなく、むしろ納得できる部分も多い計画ではあります。

 

ならば何が気になったのかというと、今まで安土城考古博物館が行ってきた考古部門の展示が無くなってしまうことです。

これも理由は理解できるのですが、それで良いというものでもありません。

 

つまり、重要な考古資料たちなのに日の目を見れる機会がぐっと減ってしまうのです。

この問題はやはり大きいと考えられるので、今回はそれについて少し考えてみます。

 

なお、本計画について詳しくは下記の滋賀県のホームページにて確認してみてください。

滋賀県立安土城考古博物館展示基本計画|滋賀県ホームページ

リニューアルは間違いなく必要で、分野を絞るのもまあ納得できる

まず、安土城考古博物館がリニューアルを必要とする理由として私自身の中では次の2つの問題が大きいです。

  • 博物館の設備や展示内容が古くなっている
  • 展示する内容に対し展示場所が圧倒的に狭い

安土城考古博物館は昨年30周年を迎え、やはり施設のあちこちが古くなっています。

例えばLED化も進んでおらず、依然として蛍光灯を使用し続けているといった具合です。

さらに、展示内容についても一応の更新はしているものの抜本的な刷新はされてません。

こうしたことからそろそろ施設全般を更新しなければいけない時期に来ていることはまず明白で、むしろちょっと遅いくらいにも思えます。

 

次に問題なのが、安土城考古博物館の狭さです。

これは開館当初から言われていたと思いますが、実際に行くと展示の内容に釣り合っていない様に感じられます。

 

そもそも安土城考古博物館は、近隣の史跡に関する次の2つのテーマとそれらに関連する特別展、企画展を年に4回行う博物館です。

弥生から古墳は非常に長い歴史がありますし、観音寺城から安土城までにも細かく語るべきことが沢山あります。

それらに対して安土城考古博物館には、これら2つの展示と特別展や企画展にそれぞれ1部屋ずつの3つの展示室しかありません。

もし展示室が十分に大きければいいのですが、それほど広くはないのです。

 

なので、今回の常設展を戦国部門に関するもののみにする選択も納得できると言えばできます。

中途半端に2つを展示するよりも1つに集中してしっかりと詳しく丁寧な展示にする、これはこれで筋の通った話です。

 

ただ、その場合考古部門はどうするのかがやはり大きな問題になってしまいます。

問題は考古、本当に企画展やホールの展示だけで大丈夫なのか

先程の考古部門の常設展が無くなることに対して、リニューアルの計画では主に次の2つの対策を掲げています。

  • エントランスホールで史跡の紹介や速報展示などを行う
  • 企画展にて史跡を案内する機能を強化する

ただ、どちらの対策でもやはり不十分なのではないかと思われます。

そもそも、今までの1つの展示室を使った常設展でも物足りないものがありました。

それなのに、より狭い場所や期間が限られる場所にしては状況を悪化させるだけです。

 

なので、結局これらの方法では史跡の歴史的な位置付けや特徴を語るのに不十分なのではないかと考えられます。

例えば実際の考古資料を用いることは大事ですが、特にエントランスホールでは展示できる場所は限られてしまうでしょう。

 

また、企画展の役割にはまずは常設展が基本としてあり、それを発展させたり補ったりする展示を行うのが普通です。

そのため、企画展を主軸に据えることはどうしても違和感を覚えます。

 

こうしたことから、もう少し考古部門の扱いを考えて直して欲しいです。

 

しかし、そうは言っても他に手立てが無さそうでどうしようもありません。

展示施設を増やすことは難しいですし、戦国部門に集中したい理由も分からなくもありません。

先に挙げた理由の他にも、最近では入館者も減っているので人気のある戦国時代に集中したいのは懐事情を考えると避けては通れない問題です。

 

それでも、博物館の役割を考えるとやはり良いとは思えません。

今の価値観によらず分け隔てなく資料を収集し保管し公開していく、これがまず基本です。

 

そのため、難しいとは思いますが何かしらの手立てを見出して欲しいと思います。

例えば、計画される琵琶湖文化館の後継施設にて展示することも1つの方法かもしれません。

今の場所より離れすぎていたり、館の主旨に沿うのかだったり、展示の場所があるのかだったり、課題は沢山考えられるでしょう。

はっきり言って、素人考えだとは思います。

それでも、日の当たる場所が無くなるよりはましではないかと思うのです。

日の目を見る大事さ

文化財にとって日の目を見ることは、その価値をより広く知ってもらい守り受け継いでいくために欠かせません。

公開することで傷つく可能性などもありますが、誰にも知られなくなれば元も子もなくなります。

 

例えば大阪府咲洲庁舎の駐車場で、美術品がずさんな管理のままにずっと放置されている問題が最近取りざたされていました。

他にも、国立科学博物館クラウドファンディングをせざるを得なくなった根本にも関心を持たれなくなる危うさが同じく見て取れるでしょう。

こうした実態を聞くと、やはり一般に公開することは極めて重要だと改めて考えさせられます。

 

なので、安土城考古博物館の考古資料たちにも間違いなく光が当たり続ける場所が必要です。

それこそ出来れば今まで以上にとも思うのですが、少なくとも現状と同等くらいはと思います。