湖国探遊記

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CFexpressはSDに代わる次世代メモリーカードになれるのか?性能面だけでない後継規格が求められる理由など

年末なのでいつもとは全く内容を書いてみようかと、ふと思い立ってしまいました。

寺社巡りなどに使っているカメラに関して気になる話題、次世代メモリーカードCFexpressSD Expressについてです。

 

ただ、自分もそうなのですが現時点でこれらをよく使う方はそれ程多くはないかと思います。

それでも、5年後とかそれ位でより身近な存在になっていく可能性はあるので、今から備えようと思った次第です。

年末は、やはり何かと先のことを考えてみたくなるのかもしれません。

 

そして、あれこれ考えてみるとそこには岐路に立たされるメモリーカード事情が見えてきました。

つまり、CFexpressはSDの後継規格として全ての機種での採用、映像機器における標準的な規格になれるのかという岐路です。

なお、ここでのSDとは基本的にUHS系統のSDを指しSD Expressと区別させていただいています。

SDの限界と後継規格が求められる事情

現在のSDには、まず次の2つが大きな問題として浮上しています。

  • 周辺環境がギガバイト単位の速度なのに対し、メガバイト単位にとどまっている
  • カメラ市場が縮小した上、スマホでも採用されなくなっている

最近のメモリーカードを取り巻く周辺環境を見渡して見ると、例えばSSDやUSBなどを始めとして転送速度がギガバイト単位に到達することが当たり前になりつつあります。

他にはスマホに使われるUFSも超えており、通信の5Gでさえ理論値ですが迫ってきています。

 

それに対し、SDではUHS-IIで最大約312MB/s、全く普及の進んでいないUHS-IIIでも約624MB/sにとどまっています。

やはり周りに比べて既に圧倒的な差をつけられており、これだけでも存続が危ぶまれる事態です。

 

しかしながら、カメラで実際に使用することを考えると様子が変わります。

なぜなら、一般的なカメラの使用環境ではSDの性能でも十分に足りているからです。

例えば8Kでも、V90に対応したのSDであれば一般的な範囲だとある程度は熟せます。

要するに、UHS-IIIどころかUHS-IIでも十分なのが大方の受け止め方ではないかと思われます。

 

なので今後もSDで良いと思われがちですが、問題は性能面だけではありません。

むしろ、それより大きな問題になりかねないのが今後SD需要が減る恐れがあることです。

これにはカメラ市場の縮小も関係しますが、特にスマホmicroSD離れが進んでいることが大きく影響しています。

 

このmicroSD離れはiPhoneだけでなく、最近ではAndroidでも上位機種を中心に起き始めており、スマホ全体へと広がってきているのです。

これには、先のSDの性能不足も1つの要因として絡んでいます。

一応性能を上げる手も無くはないですが、それなら内部ストレージの性能や容量を向上させる方が無理が少なく合理的です。

そのため今後もこの傾向は続くと考えられ、いずれは下の方にも広がるかもしれません。

特に8Kなど大きなデータ量を扱う動画撮影が普及すれば、この流れを加速させると予想されます。

 

もちろん、microSDを始めとしたSD需要がすぐに減少傾向に入ったり、全く無くなったりするとは考えにくいです。

例えばドライブレコーダー、ドローン、アクションカムなど、これから先も需要が見込める市場はいくつか挙げらます。

こうした機器に適したmicroSDに代わるメモリーカードがまだ出てきてはいないので、それなりに需要は固いです。

しかし、結局の所それらが今後スマホが抜けていく分の穴を埋められる程とは思えません。

 

また、そうした需要の減少による影響はまず価格の高止まりなどに表れてくると考えられます。

実際、V90対応のSDがCFexpress TypeBより費用対効果が悪いとされるのが特に気になる点です。

V60の方は安い様にも見えますが、最近はだんだんと怪しくなっている気がします。

 

あるいは、今後8K動画などのデータ量の重い撮影がさらに一般化すれば高速なSDの需要も増えて値下がりするかもしれません。

しかし、カメラの上位機種ではCFexpressに移行する流れも今後はより強まると予想されます。

やはりV90対応のSDでも既に上位機種だと力不足にもなったりしますし、快適性も含めて考えるとそれはより顕著です。

こうしたことから、今後SDの需要やそれによる値下げについては不透明な状況になっています。

さらに、UHS-IIよりも高くなるであろうUHS-IIIの価格は最早どうしようもないでしょう。

 

そして、SDには身内からも見限られた様にも見える動きがあるのです。

SD Expressの登場による余波とつまづき

SD Expressは、2018年6月に策定されたSDにおける次世代メモリーカードと呼べる規格です。

ただ、従来のSDとは互換性が中途半端なことになっています。

つまり、形状は同じなのでSD Express対応の機器に差すことは出来ますが、UHS-II以降のSDはUHS-Iの速度でしか動作しません。

逆にUHS-II以降に対応した機器にSD Expressを差すと、これもUHS-Iとして動作します。

これはUHS-II以降のSDにある2段目の端子を、SD Expressでは別の用途に使っている為です。

 

なので設計上仕方がないのですが、結果だけ見るとUHS-II以降は見限られた格好になっています。

従って、UHS-IIIの直接の後継となるUHS-IVの様な規格が出ることはもう無いのかもしれません。

SD ExpressとSDの併存は需要の奪い合いになる上、使う側にもややこしく混乱をもたらす問題も考えられるでしょう。

要するに、後継規格には見限られこれから先の展開も不明なUHS-IIやUHS-IIIに開発投資を続けるメモリーメーカーがどれだけ残るのか疑問です。

 

さらに、SDの後継規格として登場したにもかかわらずSD Expressの方も順調ではありません。

これはCFexpressに対し出遅れていることからも明らかで、まず次の2つの理由が考えられます。

  • 採用する市場が見出せず、メモリーメーカーが開発を躊躇している
  • 従来のSDとPCIeの両方に対応する複雑なコントローラーを開発する必要がある

CFexpressでは、メモリーだけでなくカメラメーカーも一緒に協力しながら策定されました。

そのため、ニコンキヤノンなどのカメラに採用される目途が最初から立っていたのです。

 

一方でSD Expressの場合は、また別の業界と協力したためカメラ業界との関わりはこれといってありません。

実際、現在発売されているカメラの中でSD Expressを採用する機種はまだ無いです。

ではそれ以外の機器ではどうかと言うと、無くは無い様ですがやはり低調に見えます。

 

この様な有様なので、SD Expressを開発したとして開発費を回収し利益を上げられる程の市場が今後形成されるかは怪しい状況です。

少なくとも、かなり慎重に判断しなければいけない状況なのは間違いありません。

 

さらに、SD Expressではコントローラーが複雑で開発費が膨らむ可能性があるのも更なる負担となっています。

つまり、UHS-Iに加えPCIe及びNVMeという全く異なる接続方式に対応しなければいけません。

正直、かなりの無茶をしてしまった印象を受けます。

 

もちろん、SD Expressは出だしでつまずいただけなので今後の挽回もあるかもしれません。

CFexpressには無い、例えばmicroSDでの需要を掘り起こすなどすれば可能性はあるでしょう。

 

それに、この2つ以外に映像機器向けのメモリーカードの規格は考えられません。

やはり次世代メモリーカードでは、この2つ以外の候補が出る可能性は低いと思われるのです。

次世代メモリーカードの候補はもう出ないのか?

さて、ここまで当たり前に次世代メモリーカードをCFexpressとSD Expressにしてはいましたが、果たしてそれ以外には無いのでしょうか?

結論から言うと、PCIe及びNVMeが廃れない限りは登場しないと予想されます。

また、その理由としては次の2つが要点です。

  • 複数の企業が関わる、有力な業界団体が支えるSDとCFの間に割って入る余地が無い
  • 両規格共にPCIe及びNVMeと、業界の標準的な規格を採用している

まずCFとSD以外から次世代メモリーカードが登場するかですが、これはやはり無いでしょう。

CFやSDでは複数の企業との関わりから規格の普及や標準化などに多くの協力を得ることができ、長く記録メディアとしての地位を保ってきました。

そのSDでさえ、先程指摘した通り採用される市場が見出し難い状況となっています。

この様な状況下で、カメラ市場に向けた新たな規格を他団体がわざわざ策定するとは思えません。

結果的にカメラにも使えたみたいな展開もあるかもしれませんが、それは考えてもきりが無いのでやめておきます。

何より、カメラメーカーがわざわざその様な選択をする意図がよく分かりません。

 

では、今度はCFとSD側から新しい規格が出るかですがこれも考えにくいです。

なぜなら、両方共にPCIe及びNVMeという広く使われる標準的な規格を採用しているからです。

最近では、例えばパソコンのSSDなどによく使われています。

 

つまり、縮小したカメラ市場でもこうした規格を採用すれば十分なスケールメリットを確保でき、メモリーメーカーは技術や部材を広く有効活用できるようになるのです。

これはメモリーメーカーが参入し易い環境を作るのに、大きく貢献すると考えられます。

CFとSDが期せずして一緒の選択をしたのは、こうした事情から必然とも言えるでしょう。

 

そのため、今更このPCIeとNVMeを採用しない次世代メモリーカードは考えられません。

少なくとも、この2つに何らかの問題が起き標準的でなくなるまではまず難しいです。

ちなみに、SDではまた違う独自規格なので逆に今後参入し辛くなる要因の1つに挙げられます。

 

それから、将来的に速度が不足した場合も新しい規格が出る理由の筆頭です。

しかし、これについてもPCIeの世代更新によりそのままの規格で対応できます。

実際、SD ExpressではSD8.0にて現在のPCIe3.0からPCIe4.0に対応する規格が策定されました。

CFexpressの方は現状そうした動きは見られませんが、競合相手に致命的な後れを取らない為にも対応せざるを得ないでしょう。

 

こうしたことから、現状CFexpressとSD Express以外には次世代メモリーカードの候補が出るとは考えにくい状況です。

なので、やはりどちらかが次世代メモリーカードとなると考えて良いかと思います。

そして、現在の所2、3歩先んじているのがCFexpressなのですが課題も浮かんできているのです。

CFexpressは順調な滑り出しだが課題も

CFexpressは、2017年4月にまずCFexpress1.0が策定されました。

このCFexpressではCFastとXQDというCF内部で分裂してしまった規格を統一することも狙いで、直接的にはXQDの後継規格として登場したのです。

 

つまり、CFexpressとXQDは物理的な大きさが同じで中身もPCIeを共に採用し、プロトコルだけがCFexpressがNVMe、XQDが独自のものを使っているので違います。

そのためXQDとCFexpressはそのままだと互換性はありませんが、カメラ側ならファームウェアのアップデートなどでそれ程の無理もなく対応できたのです。

 

一方で、CFexpressはXQDの直接的な後継規格だったためにその前提も引き継いでしまった様にも見受けられます。

つまり、それまで保たれてきたCFとSDの住み分けという前提あるいは暗黙の了解です。

 

しかしながら、大きく次の3つの事情からその前提は最早崩れており、CFexpressとSD Expressは競合せざるをえないと予想されます。

  • 今のカメラ市場は複数の規格が共存できる程の規模ではない
  • CFexpressとSD Expressでは容量や転送速度に差が無く住み分ける理由がない
  • 統一して得られるスケールメリットを捨ててまで得られる利点が何も無い

かつてのカメラ界隈には、今までよりも多くのメモリーカードの規格がありました。

これらはメモリー業界の不況やカメラ市場の縮小により淘汰されていき、生き残ったのが現在のCFとSDになります。

つまり、昔はカメラ市場の規模が大きいのでその要望でメモリーカードの規格を作れたのですが、今はそうではなくなったのです。

この様に市場規模の大きさは、規格の問題と直結しています。

要するに、縮小した中で更に割れるとなれば今後はより参入し辛くなるでしょう。

 

さらに、CFexpressとSD Expressでは住み分ける実用上の理由が無くなると考えられます。

そもそも住み分けがそれなりに保たれてきたのは、CFが性能面からプロ向けに、SDは手軽さから一般向けにという明確な区分が出来ていたからです。

しかし、両規格ではその中身がPCIe及びNVMeと変わらないこともあり容量や速度などにほとんど差が無くなってしまいます。

実際、先のSD8.0で約4GB/sと現在のCFexpress TypeBを上回るSD Expressが策定されました。

 

そうなると、住み分けるよりも1つの規格で運用したいという声がやはり高まってくるでしょう。

これは、かつてSDがUHSにより速度を向上させCFカードを窮地に追いやった状況と似ています。

 

そして、何よりの問題とも言えるのが住み分けること自体に利点がまず無いことです。

これまで住み分けが出来ていたのも、結果的にそうなっていたという側面が強いかと思います。

やはり統一してしまった方がより大きなスケールメリットが得られるので、様々な利点が生まれるでしょう。

例えばよく言われる価格の面だけでなく、信頼性や安定性の問題でも利点があります。

つまり、より多くのメーカーが参入し易くなり投資が増えればそれだけ映像機器向きの製品開発が進むことも期待できるのです。

 

この様に、CFexpressとSD Expressでは住み分けが難しくなると予想されます。

もちろん、最終的にどの様な判断を下すかはカメラメーカーそれぞれなので分かりません。

難しいと言うだけなので、それを超える何かがあるのなら共存も選択されるでしょう。

 

そして、これが理由かは分かりませんがCFexpressではこれまでとは違う手を打ってきました。

それが2019年2月に策定されたCFexpress2.0で、ここで大きさとレーン数の違うTypeAとTypeCが追加されたのです。

その際、CFexpress1.0での規格はただのCFexpressからCFexpress TypeBとなりました。

これらを近しい関係で例えるなら、SDとmicroSDでしょう。

 

なので、よくTypeAとTypeBが競合している様に言われたりしますが基本的には間違っています。

もちろんminiSDmicroSDの様にならないとも限りませんが、現時点では何とも言えません。

 

それはともかく、これらはTypeBだけでは難しいより多くの需要に応える為に追加されました。

例えばSDを採用する小型のカメラから業務用に使われる大型のカムコーダーまで、非常に幅広い機器を想定しているとされます。

それらをどう使うかは各メーカー次第なので分かりませんが、今後の動向に注目したいです。

 

特にTypeAが今のSDに代わる存在になれるのかどうかが注目され、今後のメモリーカードにおける最も大きな分水嶺になると考えられます。

もしそうならなければ、やはり物理的な大きさの問題からSD Express以外の候補がまず無いのでややこしい事態になるでしょう。

 

また、このことから察するにCF側にも今まで通りの需要だけでは厳しいとの判断があったのかもしれません。

SDから次世代メモリーカードへの切り替えはいつ?

さて、いずれ次世代メモリーカードに移行するとしていつまでにどの様に行われるのでしょうか?

これが恐らく一番肝心なことになるかと思いますが、はっきり言って分かりません。

こればかりはカメラメーカーそれぞれの考えになってしまうので、調べようがありませんでした。

 

ただ、SDの先が見えている以上は動かざるを得ないでしょう。

先程の周辺環境との差から見ても、今のSDが10年後も主流であるとは思えません。

実際、移行に向けた動きは活発になっており、例えばソニーだと今の所BIONZ XR世代のカメラは全てCFexpressに対応させています。

 

もちろん、どのメーカーでも普及させていく間は暫定的にSDと併存することになるでしょう。

やはり入手性や価格の問題などから、今すぐに切り替えるのは難しいです。

それでも、早めに対応させることで生まれる利点もあります。

 

例えば中古市場では、発売時ではなく売却や中古で買う時に普及している規格に対応している方が買取価格や扱い易さで評価されるでしょう。

簡単に言うと、CFast採用の中古を使う為に今新しくCFastを買うのかといった具合の話です。

また、中古市場が活用されるまでには発売から年単位で時間の開きが生まれたりします。

なので、今普及している規格にまず対応することが第一ですが、将来的に普及するであろう規格にいち早く対応することも大切です。

さらに、中古市場は昨今のカメラの高価格化からも買い替え易さなどにより大きな影響を与えると予想されます。

 

こうしたことから、個人的な感覚での話にはなりますが2030年代前半には次世代メモリーカードがどの機種でも使える状況になっているのが望ましいのではないかと思います。

 

なお、SDが主流でなくなるといっても完全に消えるという意味ではありません。

10年後でもSDの需要が残る可能性は考えられますし、一切見なくなることは無いと思います。

かのフロッピーディスクがまだ生き残っている通り、これほど普及した規格が完全に消える時期はまず予想できません。

そのため、いつまで今の規格が使えるかよりも、いつから次世代メモリーカードへと移行を進めていくかを考える方が肝心かと思います。

まとめ

CFexpressは次世代メモリーカードとして、現時点では上手く運んでいます。

SD Expressと併存させる意味も特に無いので、このまま順調にいけば一本化していくでしょう。

 

もちろん、SDもしばらくは当然使われるかと思います。

例えばこれから8K動画が普及した際にも、V90のSDであればある程度は対応できるでしょう。

しかし、この様なより大きなデータ量を扱うことが今後一般化した際には次世代メモリーカードで対応した方が良いと考えられます。

なぜなら、今のSDでは結局中途半端にしか対応できませんし、価格や将来性などからも全面的に移行した方が利点が多いからです。

 

例えば既にV90のSDはCFexpressに価格で迫られており、ここから巻き返せるかは分かりません。

TypeAでさえ同一メーカーの同一グレードであれば価格差が少なくなっている場合もあり、速度か容量のどちらをとるかで判断が分かれるでしょう。

そもそも巻き返す努力をするのなら、将来性が見込めるCFexpressを普及させ価格を下げることに尽力する方が後々の為にもなるのではないかと思います。

 

ただ、今は実用での必要性が一般には高まってはいないと予想されるので、強引に移行を進めれば不満が出るでしょう。

そのため、不満を最小限にしつつ必要性にも頼れない中で普及を進められる戦略的な方法が大切と考えられます。

もちろんこれは私の願望からの結論なので、実際にどうするのかはカメラーメーカー次第です。

それでも、移行するならバッサリと切るのだけは避けて欲しいなと思います。

 

あと、microSDの動向が気になるのですが読みづらくてどうしようもありません。

SDの先行きが不透明なのにmicroSDは代わりがありそうで無い、その様な難しい状況に見えます。

ここの分からなさがのどの小骨になっているので、今後も動向に注目したいです。

 

思えばカメラに使われるメモリーカードは色々ありましたが、こうして一本化され始めているのを見ると何だか感慨深いものがあります。